1億ドルの記憶
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 1億ドルの記憶

 室内のようすを一通り見たきみは、つぎに自分自身のことを

考えようとした。長い眠りから覚めたように、意識がゆっくり

とゆっくりと働きだした。だが、視野の白さは晴れたものの、

きみの記憶は無恨の白さのままだった。

(おれは……だれだ? なぜこんな所にいるんだ? ここはど

こなんだ?)

 ようやくふだんのぺースで回転を始めた頭脳は、もう1人の

きみに対して矢継ぎ早に疑問を発した。しかし、そのどれにも

、きみは答えることができない。

(記憶……喪失?)

 そんな言葉が浮かんだ。

 それにしてもこの部屋は変だ。普通の部屋なら、天窓だけと

いうことはあるまい。たんなる住まいやオフィスではなさそう

だ。むろん、病院でもない。だいいち、きみの肉体には異常な

く、病気もけがもしていない。

 とつぜん、寄妙な連想が浮かんだ。けが……暴カ……警察……

留置所……

 ここは、映画やテレビで見る刑務所・留置所とはあきらかに

異なる。だが、人を聞じ込めておく場所としては、いかにもふ

さわしい。

(おれは閉じ込められているのか?そうだとすれぱ、誘拐と

か拉致されてきたのか?)

 きみは、その想像の正しさを、本能的に確信した。しかし怒

りも驚きも恐怖もなく、奇妙に冷静だった。

(何はともあれ、ここから脱出しなけれぱ……)

 食事の差し入れなどなんらかの形で、遅かれ早かれ、敵――

きみを閉じ込めた者たち――が現われるだろう。それまでに室

内をもっとよく調べておこう。

 きみはベッドを降りた。



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