1億ドルの記憶
          (C)雅 孝司1998 禁・無断転載   歓迎・事前相談転載
           ご意見・ご希望・お問い合せは pga00132@niftyserve.or.jp

          インタラクティブノベル(R)3

 1億ドルの記憶

  きみは風景画の前に立った。遠くからだとむしろ額縁の方が目立つぐらい、いささか装

飾過剰、ガラス玉まで用いてごたごたしたデザインである。しかし絵自体はすっきりと、

印象派風に森と泉が描かれている。

  画面右下の額縁すれすれに、画家のサインがある。もちろんくずし字なので、容易には

読めない。それをなんとか読みとろうと、一歩前進して目をこらしたとき、きみは額縁の

異常に気がついた。

  ガラス玉だの1つが、たんなる玉ではなくレンズのように見える。きみは絵の右横に回

り込み、絵と壁との隙間をのぞいた。額縁と壁との間を、直径1cmほどのケーブルがつ

ないでいる。

「光ファイバーか?」

  画家のサインは読めないが、敵の意図は読めた。隠しカメラだ。室内のようすを額縁右

下のガラス――おそらく広角ないし魚眼レンズ――でとらえ、その像を光ファイバーを通

じて建物内の別の場所に送り、監視しているのだろう。

  とすると、24時間監視かどうかは分からないが、うかつに妙な動きはできない。レン

ズの前に何かを置いて写らなくするのは、ヤブヘビになるだろう。

  きみは隠しカメラをそのままに、右へ、机の方へ移動した。



     次のシーン