1億ドルの記憶
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1億ドルの記憶
きみは風景画の前に立った。遠くからだとむしろ額縁の方が目立つぐらい、いささか装
飾過剰、ガラス玉まで用いてごたごたしたデザインである。しかし絵自体はすっきりと、
印象派風に森と泉が描かれている。
画面右下の額縁すれすれに、画家のサインがある。もちろんくずし字なので、容易には
読めない。それをなんとか読みとろうと、一歩前進して目をこらしたとき、きみは額縁の
異常に気がついた。
ガラス玉だの1つが、たんなる玉ではなくレンズのように見える。きみは絵の右横に回
り込み、絵と壁との隙間をのぞいた。額縁と壁との間を、直径1cmほどのケーブルがつ
ないでいる。
「光ファイバーか?」
画家のサインは読めないが、敵の意図は読めた。隠しカメラだ。室内のようすを額縁右
下のガラス――おそらく広角ないし魚眼レンズ――でとらえ、その像を光ファイバーを通
じて建物内の別の場所に送り、監視しているのだろう。
とすると、24時間監視かどうかは分からないが、うかつに妙な動きはできない。レン
ズの前に何かを置いて写らなくするのは、ヤブヘビになるだろう。
きみは隠しカメラをそのままに、右へ、机の方へ移動した。
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