1億ドルの記憶
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 1億ドルの記憶

  きみは机に近づいた。引き出しが4つあり、1つずつ開けてみる。どの箱も、うっすら

とほこりが積もっているだけで、からっぽである。

  ひきだしを元どおり押し込むと、きみは卓上のかびんに注目した。

「ん?」

  枯れ葉と枯れ茎の間に、無機質な光沢が見えた。顔を寄せて、さらによく見る。コード

だ!

  手を触れず視線だけで、かびんの外へコードを追う。机の脚のかげを巧みに伝って、コ

ードは壁の中へ消えている。

「ずいぶん月並みな手だな」

  きみは苦笑しながら机を離れ、いすにかけた。あのコードのこちら端、つまりかびんの

中には、きっと隠しマイクがあるのだろう。だが、2人閉じ込めたのならともかく、1人

に対してマイクを使ってもせいぜい寝言ぐらい、たいした成果はあるまいに……

  きみは次に、ドアに向かった。



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