あなたは怪電話を無視し、メモを捨てた。だれにも話さなかった。 その深夜、あなたの自宅に田坂から電話がかかった。 「光永くん、きみはきょう昼間脅迫電話をうけなかったかい」 「え?……そう言われれば、妙な電話がありましたが」 「なぜ報告しないんだ」 「いたずらだと思いましたので」 「電話の男は、受付嬢が花をつけないのを見て、さきほど鈴木部長宅に電話してきた」 「部長宅にまで……」 とまどうきみに、田坂はつづける。 「男は、昼間きみに話したのと同じ内容を繰り返すと言って、一千万円要求してきた」 「……」 「ともかく、塩川常務をまじえて明朝会議だ。きみも出るんだ」 「わかりました。ところで、電話の声、私は心あたりないんですが、部長は何かおっ しゃってましたか」 「相手は声を変えていたので自信はないが、いつか会った人物のような気がしたそう だ。もちろん、具体的には、まったく分からないとか」 「うーん」あなたは間を置き、「では、明日」 次のシーン